企業ブランディングの主な目的・手法・効果・具体事例について
製品やサービスが多く、企業はお客さまに選んでもらう必要がある現代において、企業がブランディングを実施していくのは必要不可欠といえます。
企業ブランディングは、ただ実施するのではなく、しっかりと計画を立てて実施することで成功に近付きます。
そこで今回は、企業ブランディングの意味や目的や効果、具体的な手法と事例をご紹介します。
企業ブランディングとは
企業ブランディングとは、コーポレート・ブランディングとも呼ばれるもので、企業がお客さまや取引先、一般消費者、株主、地域社会、社員などに対して共有したい企業の社会的イメージを戦略的に高めることを指します。
企業の社会的イメージは、企業理念、ミッションステートメント、価値観、企業風土、企業の伝統・文化、企業の強みなどの要素だけでは決まりません。リクルーティング、広報などのコミュニケーション、社員などのお客さまとの様々な接点で形成されていきます。
これらの要素や接点を通じて、対象となるお客さまやステークホルダーに自社が伝えたい価値観やイメージを共有し、他社と比べて自社は異なる価値を持つ存在だと識別されるようにすることがブランディングです。
インナーブランディングとはアウターブランディングについて。
企業が行うブランディングには、「インナーブランディング」と呼ばれるものもあります。これは企業ブランディングの一つであり、社内に対するブランディングを行う方法で、主に社員を対象とするものです。
一方、社外に対するブランディングは「アウターブランディング」と呼びます。対象はお客さまや一般消費者、株主、地域社会などになります。
つまり企業ブランディングは、インナーブランディングもアウターブランディングも含む概念となります。
今回は主にアウターブランディングについてご紹介します。
様々なブランディング
「アウターブランディング」「インナーブランディング」の他にも企業のブランディングに関する用語は複数存在します。
ここでは企業のブランディングにまつわる用語を5つ紹介します。
リブランディング
リブランディングとは、時代や市場の変化に合わせて自社の既存のブランド価値を見直し、ブランドの再構築を行うことです。リブランディングというと、Webデザインや企業のロゴマークの変更などの部分的な施策を行う企業が多いですが、表面的に変えるだけでなく、ブランドを根幹から見直すことが重要となります。
デブランディング
デブランディングとは、企業のロゴマークから社名などの文字を切り離し、あえて企業色を排除したマーケティング戦略となります。いまの企業イメージやブランドイメージが強くなりすぎないようにより消費者に寄り添うことを目的とした戦略となります。
周年事業ブランディング
周年事業ブランディングとは、企業の創立の節目をタイミングとして行うブランディングのことです。具体的な取り組みには記念イベントの開催やSNSを活用したキャンペーン企画などがあります。また、企業のこれまでの歴史を紹介する目的で企業ミュージアムを設立するケースもあります。
採用ブランディング
採用ブランディングとは、企業の採用活動において自社の魅力を発信し、求職者に対するイメージを向上させる取り組みです。単にクリーンなイメージを伝えるだけでなく、「この企業で働きたい」と思ってもらえることが重要となります。また、求職者だけでなく、求職者の家族、友人、教職員などにもアピールすることが必要となります。
技術ブランディング
技術ブランディングとは、企業が持つ「技術」をブランド化することで、その価値の認知を向上させる戦略です。技術は目には見えにくく、わかりにくいものが多いですが、それを価値あるものとしてブランディングすることで、その技術が使われた製品のブランディングとしても有効に働きます。
企業ブランディングの目的と得られるメリット
企業ブランディングを行う目的は、「競合他社との差別化を図ること」です。どの市場も競争が激しく、製品や機能性、価格といった要素だけでは消費者やお客さま、取引先に製品・サービスを選んでもらうことが難しい現代において、競合他社との差別化を図るための戦略的な取り組みは欠かせません。自社の製品やサービスを優先的に利用してもらい、売上や業績を向上させることが企業ブランディングの目的といえます。
企業ブランディングが成功することで、自社に対するお客さまなどのロイヤリティや共感性が高まります。その結果、自社の製品やサービスが選ばれる可能性が高くなります。
企業ブランディングの問題点
企業ブランディングで成功を収める企業がある一方で、企業ブランディングを進めるためには以下のような問題点があります。
時間とコストがかかる
ブランディングを成功させるためには、認知を広げ、消費者や顧客にブランド価値を浸透させる必要がありますが、そのためには長い時間とコストを必要とします。
レッドオーシャンへの新規参入は難しい
現状、既に強豪ブランドが存在する場合は、新規の参入は難しく、市場を分析したうえでブランディング戦略を立てる必要があります。
効果検証がしにくい
ブランディングとは実際には目に見えない価値を伝えるものであり、効果検証がしにくいのが特徴として挙げられます。Web施策であれば、キーワードの検索回数を調べたりと、施策によってどの指標を追っていくのかを決めることが重要となります。
企業ブランディングを行うメリットや進めるにあたっての問題点をあらかじめ理解しておくことは重要となります。
企業ブランディングの問題点を抑えたうえで、次章の「企業ブランディングの具体的な手法」をご参考ください。
企業ブランディングの具体的な手法
企業ブランディングを実施する際には、一般的に次のような手法で進めていきます。
1.現状を分析する
まずこれからブランディングを行うに当たって、自社が社会的にどのポジションにいるのか、現状分析を行い把握します。
さまざまな分析方法がありますが、一般的には、「PEST分析」や「3C分析」、「SWOT分析」などの外部環境や内部環境を分析するフレームワークを利用します。
PEST分析は環境分析の一つで、外部環境をPolitics(政治的要因)、Economy(経済的要因)、Society(社会的要因)、Technology(技術的要因)によって分析します。
3C分析はCompany(自社)、Competitor(競合他社)、Customer(お客さま)によってその市場の特性やお客さまニーズ、自社の強みや弱み、優位点などを分析します。
SWOT分析は、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の要素を使い、内部環境と外部環境について、それぞれ自社の特徴を分析します。
また、経営全体のことだけではなく、自社とお客さまとの関係について考えることも重要です。これらも様々な指標がありますが、「ブランド・エクイティ」という考え方を使うことができます。
「ブランド・エクイティ」は大きく4つの要素「認知」「知覚品質」「ブランド・ロイヤリティ」「ブランド連想」から構成されています。
「認知」は、お客さまにどのぐらい知られているか、「知覚品質」はお客さまにどのような品質だととらえられているのか。また、お客さまから見たときにどのようなイメージと紐づいているのかを考えるのが「ブランド連想」、お客さまにとってどのぐらい重要な存在と考えているのかを考えるの「ブランド・ロイヤリティ」です。
このような自社の状況を考えることがブランディングの第一歩となります。
2.ブランドのあり方を決める
自社の現状が分析できたら、自社というブランドのあり方を定めます。
ブランドのあり方は「誰に」「どんな枠組み(市場・手法によって)」「どんな価値を提供するのか」、そして「なぜそれができると信じられるのか」という「ブランド・ポジショニング・ステートメント」という考え方で定めることができます。
これを考えるときには、自社の特徴や社会的な役割、ビジョンやミッション、パーソナリティ、提供価値がもとになります。
このとき重要なのは、お客さまや取引先などの外部に共感してもらうことだけでなく、内部の社員が誇りを持って支持できるものかどうかという観点も持つことです。アウターブランディングであっても実現するのは社員であり、社員の行動がブランディングの成否にかかわってくるからです。
3.お客さまとのコミュケーション手段を考える
ブランドコンセプトが決定したら、それをどのようにお客さまに伝えていくのかの計画を立てます。まず、誰に届けたいのかを改めて整理します。
多くの製品やサービスは「利用してほしいお客さま」が考えられています。年齢、特徴、嗜好、仕事、価値基準など様々な観点からお客さま自身、そしてお客さまの考えや行動をイメージすることができます。
次に、具体的な伝達手段を検討します。
伝達手段には、Webサイトや紙のカタログ、製品やサービスそのもの、SNSやイベント、店舗、展示会などのコミュニケーションの場、広告やPR活動、キャンペーンの実施、発信施設の設置などが挙げられます。
伝達手段を決めるには先にイメージしたお客さまの考えや行動に沿った手法で提供することが大切です。お客さまにどのように感じてもらうのかが重要であるため、その点に留意しなければなりません。
手段が決まったら具体的にどのように実施するのか施策の計画を立てます。
4.施策を実施・検証する
計画に基づき、施策を実施します。
実施したら終わりではなく、定期的に認知度や共感度を検証していくことが大切です。
例えばアンケート調査を実施し、認知度やイメージを答えてもらうなどして現状を知り、効果を検証します。課題が見つかれば伝達手段の変更や、ブランド・ポジショニングの見直しなどを行っていきます。
企業ブランディングの具体事例
弊社で取り組ませて頂いた企業ブランディングの具体事例をご紹介します。
余合ホーム&モビリティ株式会社様の企業ブランディング
『自動車業界で培った最先端技術の住宅(スマートホーム)への展開』をテーマとした、難しい技術や伝わりづらい価値を解り易く伝える企業のブランディング。
余合ホーム&モビリティ株式会社様(愛知県名古屋市)の余合繁一社長はトヨタ自動車でハイブリッド部門を立ち上げた、名実ともに素晴らしい実績のある技術者です。レクサスの最上位車種であるLS600H のチーフエンジニアを経て、実家の家業であった住宅設備の金具の会社を継がれ、社長に就任されました。
同社はEV車両の先行開発を行いながら、自動車業界の先進技術を住宅のスマート化に役立て新しいシナジーを生む分野を創るという理念の元に、優れた技術で大手の住宅メーカー・住宅設備機器メーカー(キッチン・水洗等)に収納・扉の開閉部に機能・コストに優れた金具を供給して成長している企業です。同社の優れた技術をデザインの力でより多くの人に解り易く、価値を伝えるための企業ブランディングの役割で協業しており、3 年間の取り組みで同社の売り上げと利益率の向上に貢献しています。
ダブル技研株式会社様の企業ブランディング
『業界屈指のロボットハンドのコア技術のブランド化』を主テーマとした、難しい技術や伝わりづらい価値を解り易く伝える企業のブランディング。
ダブル技研株式会社様(神奈川県座間市)はロボットシステムインテグレータ(Sler)を主事業としながら、ロボットハンド分野では業界屈指の技術力を誇ります。それらを基軸とした空中搬送システム、センサーシステム等の製品や技術力をより良いビジュアルで解り易く可視化しつつ、ブランド化していく取り組みを行いました。
営業効率を高めるとともに、ロボットベンチャー企業として上場を目標とする同社において、投資家から資本を集める等の効果的な役割を果たしました。
まとめ
企業ブランディングの意味や目的、メリット、具体的な手法、成功事例をご紹介してきました。企業ブランディングは市場競争に勝ち抜き、お客さまに選んでもらうために欠かせない戦略的な活動です。
そうした企業ブランディングの手法は、今回ご紹介した方法以外にも複数ありますので、最も自社に合った手法を見つけるのをおすすめします。
弊社は企業の伝わりづらい価値(歴史背景・哲学理念・企業文化・技術力・機能性等)を解り易くデザインの力で可視化する専門チームです。特に製造・技術系企業の企業・製品・技術のブランディングを得意としており実績がありますのでご相談ください。
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