経済専門誌『戦略経営者』の7月号 中小企業のブランディング特集でカロッツェリア・カワイ社の取り組みの特集記事「企業の価値向上に不可欠なコア技術の可視化」というタイトルにて2ページにわたりご掲載頂きました。
経済専門誌『戦略経営者』の7月号 中小企業のブランディング特集でカロッツェリア・カワイ社の取り組みの特集記事「企業の価値向上に不可欠なコア技術の可視化」というタイトルにて2ページにわたりご掲載頂きました。下記にテキストを起こしています。
INTERVIEW
カロッツェリア・カワイ代表取締役 川合辰弥
会社の価値向上に不可欠なコア技術の可視化
中小企業のものづくりにおいて、、多数の海外デザイン賞受賞実績をもつ川合辰弥氏。自動車メーカー出身の気鋭のプロダクトデザイナーは、会社そのものをブランド化することの重要性を説く。
創業来、国内外のさまざまな企業のプロダクトデザイン、ブランドの立ち上げに携わってきました。製品のジャンルはインテリア、キッチンウェア、住宅設備機器、ロボットなど多岐にわたります。
たとえば、私が手にしているのは、世界初のカーボン製無水調理鍋です。カーボン・グラファイト製品の製造、販売を手がける穴織 カーボン社(大阪府)の自社ブランド立ち上げの一環として、キッチンウェアのデザインとブランディングに取り組みました。同社の調理鍋をはじめとするキッチンウェアは、優れた遠赤外線効果と斬新なデザインが評価され、数々の国際的デザイン賞を受賞しており、プロの料理人からも注目を集めています。
英語の「デザイン」という言葉は、一般的に図案とか意匠などと翻訳されますが、本来は企画、計画、意匠、設計といった幅広い意味を含みます。私たちはデザインの本質的な追究により、世界の市場で通用するロングセラー商品を世に送り出すことを目標にしています。商品の魅力を伝える広告やパンフレット、動画等の営業ツールの制作も得意分野です。
〝スーパーOEM〟という道
中小、ベンチャー企業のクライアントでニーズがいま高まっているのは「コーポレートブランディング」、すなわち会社のブランド化です。会社そのものをブランドにできれば、顧客満足度や従業員のモチベーションアップ、金融機関からの資金調達、人材採用面の効果を期待できます。
優れた技術を有しているにもかかわらず、自社の強みを十分にアピールできていないOEMメーカーは少なくありません。住宅設備メーカーの余合ホーム&モビリティ社(愛知県)もそうした1社でした。同社は、住まいと移動空間を融合させた生活空間の創出をけん引している企業です。第三者に伝えることが難しい技術開発力と提案力、製品の特長をわかりやすく発信するべく、キャッチコピーづくりから着手しました。
社員とディスカッションを重ね、考案したのが「今の〝動き〟を変えていく」というものです。あわせて会社のロゴマークやパンフレット、ウェブサイトも刷新。暮らしにおける動きを便利で快適にする技術に着目し、製品群を「SMOOVE(スムーブ)」というブランド名に統一しました。スムーブのコア技術を言葉で表現するのはむずかしいため、ウェブサイトに3DCG動画を掲載して可視化しています。
これらの施策をとおして、営業担当者が自社製品の動作メカニズムを顧客にわかりやすく説明できるようになり、取引先の拡大をもたらしています。OEMメーカーが生き残る方法は、オリジナル製品を開発し、現状から脱却を図るだけが能ではありません。保有する技術やノウハウを生かし、多様な業界の企業と協業する〝スーパーOEM〟を志向する展開もあるのです。
永続的なロゴ使用が可能
コーポレートブランディングを促進するうえで、海外のデザイン賞に挑戦するのも有効です。ただ、海外のデザイン賞と聞くと、敷居が高いと感じる経営者の方もいるでしょう。
私たちは中小企業の国際的デザイン賞への応募や、プレゼンテーションをサポートする機会が多くあります。例えば、世界三大デザイン賞のひとつである「iFデザイン賞」は、審査員が毎年入れ替わり、全員一致で基準を満たした製品と判断されないと受賞できない仕組みになっています。受賞のハードルは高く、忖そんた度く やロビー活動が一切通用しないシビアな世界です。しかし出品にまつわる労力は、日本国内のデザイン賞を目指す場合と大差ありません。応募費用や受賞時の広告宣伝効果を鑑みると、海外のデザイン賞に挑戦する方が得策といえます。受賞後、商品が爆発的に売れるというわけではありませんが、国際的認知度からロングセラーになる可能性が高まります。ちなみに、グッドデザイン賞は「Gマーク」を表記するために更新料が毎年発生しますが、世界三大デザイン賞の認証ロゴは永続的に使用できます。
国際的デザイン賞では、外観の色や形にとどまらず、機能性や革新性が備わっているか、環境への配慮がなされているかといった点も評価の対象となります。とりわけ機能性や環境への配慮は、販促活動においても大事なアピールポイントになります。昨今の賢い消費者の心をつかむには、企画、開発の段階からこれらの要素を念頭に置くことをおすすめします。
(インタビュー・構成/本誌・小林淳一)
かわい・たつや
プロダクトデザイナー。1977年生まれ。
中部大学工学部機械工学科卒業後、大手自動車メーカーでエンジン、トランスミッション等内部駆動ユニットの開発に携わる。2010年カロッツェリア・カワイを設立。国内外の企業のブランド開発プロジェクトを手がける。23年にiFデザイン賞が定める「世界のトップ100」デザインスタジオに2年連続で選定。
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